クラシック音楽専門店

今回のチェリビダッケのご子息によるEMIとDGのCD化にあたってはいくつかの条件があり、その１つになるべくその日の演奏をそのままの状態で商品化する傷のある録音を使わない、というものがあったはずで、恐らくオリジナルテープにある編集上の不都合を差し引いても商品化したい、この演奏を後世に残したいというドイツグラモフォンの熱意が商品化につながったものと思われます。

演奏に関してですが、些細な傷でこのCDを敬遠してしまうにはあまりにもったいないほど、絶妙に溶け合う音色や、非常に繊細なフレージング、そして何よりも一貫して流れる凄まじい緊張感は素晴らしいのではないか、と･･･

またカップリングのストラヴィンスキーが実に精妙で素晴らしく、チェリビダッケのライブの音を彷彿とさせる1枚になっています。
残念ながらリマスタリングが…。
ミュンヘン・フィルとの演奏には個人的には精密さの点でほんの少し及ばないような気もするが、チェリの変遷を知り、また「絵」の曲本来が持つスリルを味わうには勝るとも劣らない「名演」であろう。これは賛否の分かれるところで、２チャンネルでこのようなことを書けば「逝って良し」などと書かれるかもしれない。

惜しむらくは、良い音で録音されているにも関わらず、編集、リマスタリングがこの盤に限って「グラモフォン」らしくないのである。特に「キエフの大門」のクライマックスでは素人がヴォリュームを絞り込むように演奏を終了させる。もしかすると、聴衆のフライングブラボーなどを除去するためなのかも知れないが、その手の編集はお得意なのではないか。第一ＥＭＩと差を付けるためかもしれないが、前後の拍手をカットする必要がどこにあるのか？。曲間の咳は（くしゃみさえも）カットしていないのに。
ライブ主義者のチェリの音楽を２つ（２日分）のテイクから寄せ集めるというのも、いただけない。
演奏は５つ星なのに、編集ゆえに星を二つ落としてしまった。名演だけに勿体無い。