クラシック音楽専門店

輸入盤なので日本語の解説＆歌詞対訳は当然ついていません。リリング盤など他のカンタータ全集の歌詞対訳つきの国内盤をお持ちの方や語学力に自信のある方なら、この全曲セットはお買い得です。

古楽器と少年・男声合唱による演奏であり、１９７０年から１９８８年にわたって録音された全集なので、未聴の方は演奏レベル・音質に不安があるかと思います。この全集を購入して全曲完聴した私自身の感想は・・・予想していたより演奏レベルは結構高く、音もきれいでした。スタッフたちの演奏にかける情熱がひしひしと伝わり、時代を先取りしていた彼ら古楽演奏家たちの先見性にも驚かされます。歌手もエクヴィルツやエスウッドらが全巻通して参加しているので、全集の統一感も群を抜いています。

聴き方としては有名曲から「つまみ食い」して聴いていくのよりも、第１番からスタートして毎日１曲ずつ聴く「カンタータ・マラソン」を行って全曲完聴するほうが、この全集の良さを十分味わえて感動できると思います（録音も第１番から番号順に行われているので音質や演奏技術も番号順にどんどん向上していく、古楽演奏の進化の過程を体験できるのです）。私も去年から今年にかけて「カンタータ・マラソン」を行いこの全集を完聴して、大満足しました。

大クープランの４つのクラヴサン曲集は、それぞれ特徴がある。第１巻は伝統の色をまだ残し、第２巻では実験的前衛性のようなものさえ感じられ、第３巻は誰しも認める最高傑作、第４巻には晩年の諦念のようなものさえ感じる。その特徴をさりげなく感じ取らせてくれるのは、ボーモンのほうだと感じる。

たとえば第２巻中最高傑作と呼び声高い第８オルドルは、表面上は保守的な構造になっているように見えるが、あえて保守的な構造の中での音楽の内在する(当時での)前衛性が、ボーモンの演奏では、控えめに感知させられる。

また、アンチ・クライマックスと捉えられることの多い第４巻から全曲録音を開始したことも、なんとも暗示的。実はこれは、ブラームスの晩年のピアノ小品集にも通ずる、演奏の仕方によっては、かなりの感銘を与えることが出来る作品群だということを、ボーモンは実証した。