クラシック音楽専門店

しかし、実際のCDでの歌唱は、度胆をぬく、という程でもありませんでした（だからといって聴くに値しないというのではありません！）。歴史に残る大ソプラノではありませんが、一流のオペラ歌手であることには間違いありません。例えば「Laughing Song」。さすがでした。またオーヴァーニュの歌も大変美しく仕上がっています。残念なのはミミで、指揮がテンポを間違えて指示しているのではないかと思いました。

　会場の聴衆全員が集中し、耳を澄まさなければ聴こえないほどの音量によって演奏を始めたのです。

　読響からここまでの音、演奏を引き出すのか…という感嘆もありましたが、まさにピアニッシモとはこういう演奏をするものか…という驚きもありました。しかし緊張感を強いられることも確かで、その後のバレンボイムなどの小気味のよい演奏に接し、安心したり…と、違和感もありました。

　それから、ロンドン響、ミュンヘンフィルハーモニーなどと来日するうちに、チェリのすっかり虜になってしまいましたが、チェリの演奏の原点にあるものとして、ベルリンフィル時代の数少ない演奏と、このストックホルムの演奏こそ欠かせないものでしょう。ベルリンの方はCDではありませんし、まだその後のチェリを予想させるモノも私には感じられませんが、このストックフォルムは特別です。
　来日するまでは日本ではほとんど知られていませんでしたが、ヨーロッパでは一部の熱狂的なファンもいました。私の友人もその１人で、その友人が送ってくれたのが、このストックフォルムの演奏でした。

　“熱いチャイコフスキー”、集中と緊張感、どんな細部にも、隅々まで行き渡らせた明快な解釈、早く、生で接してみたいと願っていましたので、初来日のチェリは鮮烈でした。しかし、ストックフォルムの演奏とは違っていました。
　来日前にも、NHK-FMで放送したことがありますが、それもこのストックフォルムでした。